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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

それはおれが所の話ではないが、関東の那須野ヶ原にあった話だそうな。この話をそれでは民間にはぜんぜん不信用のものとして、かりに鉄道当局の記録課(もしそういうところがあったなら)へもちこんだとしたなら、これもかならずいなといわれるであろう。これではこの新しい興味ある口碑は単なる偽となって立ち消えねばならぬはかない運命のものであらねばならぬはずである。

ところが事実はまったく正反対の結果である。現に北海道で樺太でと日本人のゆく新領地へはどんどん伸びていっている。なにもそんな遠方の話でなくとも十里二十里へゆく山間の軽便鉄道にまでその悪戯がいつあったと噂されるようになっている。しかしそれはどうも朧月夜の出来事である。真偽いかん、樹木石角の幻影やは井上博士の妖怪学講義でも見たらすぐ片がつくことだろうが、ただそれだけでは片づかぬのは、いつもいうところの、それらの流布的信仰の点である。どうしてそんな話がかく広く多くひろまったであろう。このことについでは諸君にはきっとそれはという、すきなお考えがあるだろうからそれは私は正直に教示していただきたいとして、しからば私はどう考えているかというと、やっぱりいまのところではこれだけのことしかいわれぬように思うのである。