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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

この男はちょっと変り者で、おれは芋を掘るのだといって、年から年中寸暇さえあれば鍬を持って近所の山谷に分け入り、あっちこっちと土を掘っておりました。世間ではこの男のことを愚者だといって笑ったのです。ところがとうとうある年の大晦日の晩がたに、同村字日石という所の谷合いで黄金のヒに掘り当てました。黄金の一塊をおのが荒屋に持ち帰って、形ばかりの床の間に供えると、その光が破れ戸を透して戸外まで洩れ輝いたというような話も残っております。それからはこの下男が、世間から小松殿あるいは小松長者といわれるような身分となりました。

小松殿はそれからはみずから鉱夫どもを督して、そのヒを掘り伝いゆき、まる三年めのやはり大晦日の日にウシの形をした親金に掘り着けました。小松殿は大喜びでただちに坑外に大酒宴を催して夜を明かし、明くれば元朝のめでたい日の朝日が登るとともに、改めて坑の入初めの式を挙げ、それから黄金のウシの額の片角に錦の手綱を結びつけて歌声もろともに引っ張らせた(1)が、その角がぽきりと折れてしまいました。こんどはその首に綱を結びつけて引っ張ると、ウシが二、三歩動いたかと思うたとき、突然坑が落ちて、鉱夫どもが七十五人惨死したというのであります。