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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
その話を聞いていた娘は驚愕と恐怖のあまりに病気になった。そうして医薬禁厭の効なくとうとう死んでしまった(その娘が病気になると同時に、他の三人の病人はたちまちに直った)。そういう死にようゆえに家人は娘の死体をば夜中ひそかに淵のほとりに埋め、偽の棺をもって公の葬式はした。一日ばかりたってから淵のほとりにいってみると埋めた処にはすでに娘の屍はなかった。この話は大正五年ごろの出来事である。
それからはその娘の死亡した日には、たとえ三粒降るまでもその家の庭前に雨が降る。またその淵に石木などを投げ入れてもかならずその家の庭に雨が降るという。この部落では娘の家への遠慮から淵で子どもらが水浴することを厳禁している。どういうことでもこの淵に障るとその家の屋根に雨が降りかかるので、これはその美しかった娘のわが屋へのなにかの心遣いであろうというのである。そしてどこのなんぴとが言い出したともなくその娘はその淵の三代めの主へお嫁にいったのだということが伝承された。二代めには上閉伊郡甲子村コガヨとかコガトとかいう家の娘が上がったといわれている。その家では隣の釜石の祭礼には玄関に盥に水を入れ草履を揃えておけば、水が濁り草履はまた濡れているともいわれ、その日にはかならず雨が降ること今日も同じであるということである。