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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

無尽はそこの地勢ようすなどをとくと聞いてどうやら思い寄るふしがありゆきてみるに、それは自分の尋ね求めている白旗であったので、それを納めてそこに寺を開いたという(12)。それから無底のほうは、やはりその黒石を尋ねて諸国を回っているうちに、前記の江刺郡の山内という所までくるとその石があった。よってそこに寺を建立したのがこれからいおうとする正法寺であって、なおつぶさに詳しくいうと、大梅桔華山円通正法寺(13)というおそろしい長い名まえの寺である。

さて昔あるとき、一人の馬喰が、この寺に、一個の茶釜を持ってきて、おれは先日町へゆくとある古道具屋の店前にこんな茶釜があったから求めたが、あまりかっこうがよいので、これを和尚さまに差し上げたいという。それは真に近ごろ奇特なことだと、寺ではもらい受けておいた。和尚は小僧に言いつけてその茶釜を磨かせると、茶釜は小僧痛いぞ、小僧痛いぞという、それから火にかけると、熱い熱いといっておおきに荒れ出すという騒ぎである。そればかりか夜になると小僧どもの寝室へいって悪戯をしてならぬので、寺では困って後には金綱を作って庫裡の杜につないでおいた。