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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

しかして二山の戦争を分けてしまった。その河川はいまの北上川であるという。これも岩手紫波郡地方で生まれた地理的伝説である。

また一説には、岩手山に対する早池峰山は妾、姫神山は本妻である。ゆえに早池峰山をかけてから岩手山をかけるのがよろしいが、同時に姫神山をかけると難にあう。また姫神山のほうにても同断であるというなど。

またこれは私近ごろ聞いた話であるが、稗貫郡地方における早池峰山発創口碑として、昔天から(あるいはどこからか)三人の神の娘どもきて、同郡八重畠村字呼石という所に日暮れてゆき泊まった。そして明朝もっとも早く目覚めた者はかの秀麗な早池峰山に飛びいってその主神になろうと約束しておいて眠りについた。ところがいちばん末の妹娘がずるくて宵のうちからちっとも眠らずにいて夜半ニワトリが歌うといち早く早池峰山に飛んでいってしまった。つぎに目を覚ましたのは中の娘であったが、見ると妹がすでに飛んでおらぬのに一驚してこれもせかせかと同郡湯本村の麓山権現に飛んでいってそこの神となった。しかしてもっとも遅く目が覚めた大姉が見ると二人の妹たちがそこにおらぬので、妹らよ妹らよと声のかぎり呼んでみたがすこしも返辞がなかった。