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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

ただその声が石に反響して自分に返ってきた。それからその土地をいまの呼石と称することになった。そういうようなことで大姉がいくら呼んでみても妹たちがおらぬから、あきらめてその付近の大森山と小森山を重ねて早池峰山よりも高くしてそこに住もうと思って山々を重ねに取りかかったけれども、そのうちに夜が明けるのでそれもできずしかたなく同村の胡四王山に飛んだ。そのときいままで持ち歩いたお鉢箱を抱いて飛んだが、その箱があまりに重かったので途中の老松の木の上にしばし憩いようと飛び降りると思わずその重みに堪えかねて箱を下の田に落とし沈めてしまった。いまでもその田をお鉢田というて神聖な所としてあり、そこから穫れた稲穂の米は胡四王神に初献上するのが例で昔から肥料はせぬという。とにかくそうしてその大姉は同所胡四王山の神となった。しかしてこの神社は普通の神社と異なって北向きなのであるが、それはその山から北向きの方向にある早池峰山を見ようとし、またかの呼石の地が恋しく恨めしくてそうなっているのだという(大正十四年十月二日、同村伊藤イナという人から聞いた話)。

(4)大同年間、あるいはその二年などと言い伝う。