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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

どこをどうしていったかとにかく東蔵は磐次磐三郎に会うと、彼はいわく汝は奥州の東蔵という者だろう、汝の来意は己はよく知っている、およそ狩人は己が捕って食った山のもろもろの獣類をば元の形態のままにみずから口から吐き出し、また口に吸い入れる技倆がなくてはならぬ、どうだ汝にそれができるかといって、みずからかなたの尾嶺の上に向かって気を吐けば忽然としてシカ、サル、イノシシ、オオカミ、ウサギなどその他もろもろの獣類が現じて一生懸命に走る。それをまた同じく気を吸いこむと磐次が口にそれらの物がひょいひょいとみな飛びこみ平気である。奥州の東蔵もわれ負けじと対手が行なったように向こうの尾嶺に向かってふうと気を吐くと、同じくもろもろの獣類畜類が現われたが、磐次がように再びそれを口中に吸いこむ術が能わぬ。東蔵赤面閉口していると、磐次磐三郎はまたいわく、真の狩人はかくのごときことのみにあらず、なおかくあるべきにとて、さらにまた気を吐けば前の尾嶺に忽然として出現ましませしは南無ありがたや三十三観音、金色燦爛、微妙清音、まんじゅしゃげを雨と降らせたまいてダンスをしたもう。それを見てはさすが慢心の東蔵も降参して磐次磐三郎が家来となり、業を練磨してから故郷の早池峰山に帰ったという(1)。