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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

とにかくいずれも初めは、いわゆる長者の家の竈の火焚き役であって、それがことさらに手面に竈煤などを塗たぐって真っ黒になり、目ばかり光らせつつ、火ばかり吹いているというように語られる。それぞれ、竈男が一生懸命に火を吹く御面相ってのがいったいどんなもんか、想像してみておいてくだされたい。

これに関してもうすこし大事な話がある。それは奥の村々の神楽道化の狂言に、畠蒔きというのがあって、これは江戸付近でみるひょっとこ舞の仮面をかぶって踊る。それが出てきてヤアハア畠蒔きと歌いつつ腰を振り頭振り、種蒔き唄(4)を声高に歌いながらに種蒔きをするが、あとからカラス、スズメの鳥奴がきてほじくる、それには呆れ果てて独白となる。……やいやい、おれはこうして毎日種蒔きしていても、あとからかの鳥めがきてほじくられてはわからぬ。アワ蒔きも能がない(こういうときは指でハマグリを作って、彼らがほじくる動作をやる)。そうかといって、また日々毎日竈の火吹き役もハアあきあきだ。これから一つ伊勢参宮にでも上ろうか、ヤアハア伊勢の国、そうして伊勢の国へ上ってしまう。その種蒔き男の名まえは、ちょいちょいと舞い手の臨機応変で変えられることもあるけれども、しかしおおむねこれを権助権助というのが普通である。