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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

この権助がそちらの権兵衛ではありませぬか、権兵衛はもちろん百姓男であるから、竈の火焚きくらいはせねばもちろんふしぎなはずである。

なおこのほかにも、種蒔き男、鳥追いの型の舞(5)があると聞くから、ひょっとこ舞は質朴にこちらに残っているごとくに、その根元は竈の火焚きすなわち竈男で、そうして一方種蒔き舞であり、百姓舞であったと思ってはいかぬか。

(1)糠部郡は、いまの陸奥、陸中の二国に跨がった二戸、三戸、九戸の郡辺の総称である。昔ここに長者があった。それは二戸の口碑にある蜻蛉長者か、あるいは陸奥三戸町の南部氏をこういったものかもしれぬ。いずれにしてもその近郷のことであったろうが、ある里の秋の祭礼場で、一人の侍が多勢の伴を連れた美しい娘から扇子を一本もらった。その扇には、吹けば飛ぶ吹かずば飛ばぬ奥の郷の千本林を右手に見て、ひいろろ川に架けた腐れぬ橋を渡って会いにきてほしいというような文句の歌が書かれてあった。若侍は扇の歌がなんとも合点がゆかずながらも、その娘の気高い美しい姿を忘れかねて旅に出た路で六部に会い、その歌の意解きを頼むと、それはこうだと教えてくれる。