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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

しかしながら心のなかの塚や板碑などをも同様に、いなその同様以上にたいせつなことになってきた。そうしてそれらのいわゆる心のなかの史跡や記念物のほうこそより急務の調査収集を要しなければならぬ問題である。よその風に吹きまくられる石や瓦欠などよりは消えやすい憾みがあるからである。それにまた無形なものほど(いわゆる取っつかまえどころのないものほど)自由であり人類的であるから、研究事業もそのとおりでいまに百千のネフスキイ氏が日本にやってきて、人の畑を先取り御免でわが物顔にえてかってに駆けずり回るにきまっている。そうして自分の畑にナスとカボチャがなんぼうあったかと赤鬚先生たちに聞かねばわからぬことになろうか、何事もわが国はそうであるように。だがこのことばかりはそうはさせたくないが、さてどうだろう。

余談はおいて、前同様式の口碑をもう一ついおう、やはり同郡金沢村に、折合滝(1)という奇観至極の瀑布がある。その滝壺の傍らに五葉のマツとクリの木と、セノ木(2)との三巨木があり、梢枝繁蔓して滝見に不便であったかして、真ん中のセノ木のみ残して、あとの二樹をば伐り倒すことになり、伐採かたを所の樵夫の親分に請け負わした。