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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

そして日々数十人の樵夫どもが山に上り斧で伐ったが、翌日いってみると切り屑が元木に付着して元のとおりになっているので幾日伐ってもいっこうらちが明かなかった。親分の損はいわずもがなだが、それよりもいかに大木だといっても樵夫の親分がそれを伐りかねたとあっては名にもかかわるので、毎日うつうつとして思案に暮れておったが、ある日山で偶然にも一人の老翁に出会った。するとその老翁は親分にいうにはおれは滝の下のセノ木の精だが、こんどおれが助けられるということを聞いてうれしい。だがおまえの手下の者が毎日ああやってむだ骨をおっているのが気の毒ゆえにおまえに告げるが、あの木どもを伐り倒すには、毎日その伐り屑を火で焼くといいと、いうたかと思うとすでに老翁の姿は掻き消えてあとかたもなかった。それからは親方は人夫どもにその日その日の伐り屑を焼かしたところが、いくばくもなくついに二樹を伐り倒すことができた。ところが五葉のマツはそうでもなかったが、巨グリのほうは倒れながら叫んで、この下村を泥の海にするといったと思うと、たちまち大雨が沛然と降り出して大水が出た。その水勢でクリの木は下流へ押し出で角端という所の出端に横になって流水を押し塞いだ。