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とうおういぶん

東奥異聞

佐々木 喜善

「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页

青空文庫

それが破れなんだらどんなことになろうと村人は騒ぎたてたが、どうともする術がなかった。ところが、ときに川上から大石転倒しきたりその木の真ん中にどしんと突き当たると、さすがの巨木も二つに折れたので、川水がまず無事にそこを流下して、そう大事にはいたらなかったという。こういう伝承である。伐り残されたセノ木はいまでもりっぱに滝壺の傍らにその偉姿を見せているとは、かの村の人の話である。

これらの伝説では、伐り屑を焼いたために木を伐り倒すことに成功していることを同様に説いている。村の老樵夫の話(3)だと、いまでこそ種々な道具、大鋸や発破などが発見されて、どんな巨木でも難なく伐り倒すことができるが、昔は斧一梃でかかったもんだ。化けるような、そんな樹木でなくとも七日や十日には伐れなかったものだが、こういうときには焼伐りといって、夜は木の根付の幹を焼き、昼は斧で伐ると、あんがい速かったものだと。今日はすでにそんなことをする愚かな樵夫がないから、この焼伐りの方法、しかたをも、同様、後には口碑、伝説となるだろう。そんなことを添え記してこの話の筆をおく(4)。

(1)折合滝は上閉伊郡金沢村字折合にあり。