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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
ただ祖母の代すなわち御維新前後まではウマが死ねば城(南部家の鍋倉城のこと)から一里余の悪路を青笹村まで持ち運んで首を斬り血をその石に塗ったことは確かなことである。しかしその由来はとんとわからぬというのであった。
自分はかくあまりに顕著な例を挙げてみると、同じチビキの石でも引っ張るほうの千曳きと生き物の血を塗いたほうのチビキとの二つの区別があり、また起原があることがあいわかる。この中館のチビキ石はもちろん趣向が別であるから、どこへも曳いて歩いたという話はもっておらぬ。いまでも現にそこにある。ただ無心の人に思いがけぬ禍いをかけるのを恐れられて、わずかに周囲に木柵を回しているにすぎぬ。生き血のほうのチビキはなんのためにわれわれの祖先がそんなことをやったかの判断は先刻諸君の知識と蔵書のほうにおまかせするのが手っ取り早いから、自分はいたずらに贅せぬことにする。
ものを曳くというほうのことを考えてみても、あるいは甚だおもしろい俗信に出くわすことかもしれぬ。橋曳き、陣木曳きの話もそれであるが、これには種々な哀れな犠牲者の話なども伴っている。地曳きのときの丸石を曳き合うのなども地固めという実利のほかに理があるかもしれぬ。