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とうおういぶん
東奥異聞
佐々木 喜善
「東奥異聞」閑話叢書、坂本書店、1926(大正15)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,862 字 · 124 页
大八は赤子を抱いたきり困っていると、これはまたどうしたことか、その赤子がだんだんと重くなって、とても抱いていきれずになり、しかたなく膝の上にささえると、その膝も砕けるほどの重さとなります。けれども大八は女の手まえもあり、じっと我慢に我慢をしていると、その子はますます大磐石のような重さとなってきて、いまや大八も満面に朱をそそぎ、眉間からはたらたらと汗を流し歯を食いしばって、一生懸命に赤子に押し倒されまいと、満身総体に力を入れ漲らせ、うんうんとうなっていましたが、もうとても力およばずと思った刹那に先刻の女人がやっと御堂に戻ってきまして、どうもお待ちどうさまでしたと礼を言いつつ、いともかるがるしくその子を大八の手より抱き上げ、そうしてそこの目の前に立ち直ったとみますと、たちまちその母子のからだからは御光がさし、四辺は燦爛たる光明世界、そして声朗らかにのたもうには、これ大八よ、よく聴け、われはこの国一番の守護神三吉大明神なるそよ。汝はよくかくまでこの赤子を抱き耐えた。その力の程を汝に授けてつかわそう。それこそ無際限の力量であろうぞよと仰せられました。大八は、はっとばかりにそこにひれ伏してお礼を申し上げましたが、顔を上げたときにはもはやそこに女人の姿もありませんでした。