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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
なにが証拠ですよ、あたしは営業だから亭主にだって五色揚を売りました、営業上売ったんだからあとのことまでは知らないよ、あたしはそこの店台で売った、あとは買った人がどこで喰べようとあたしの責任じゃないでしょ、買ったのがうちの亭主で、それだからこのうちへはいって来て喰べたにしろ、それは買ったもんの自由じゃないか。それはわかった、五色揚の営業はそれでいい、と若い巡査は云った。肝心なのは五色揚を誰に売るとかどこで喰べるとかいうことじゃなく、このうちで客を集めて酒食を提供し、その勘定を取るということだ、このうちで客を集めて、酒や肴を提供したことはないか。ありますよ、あたしが酒を買って来て、五色揚を肴に飲んだり食ったりしますよ。それが営業法違反になるんだ。どうしてですか。どうしてって、つまりそれは五色揚屋の営業とは営業種目が違うからだ、つまり客を集めて酒食を提供し、それによって利益を得るを目的とするのは飲食業の。ちょいとちょいと、サーベルをぶらさげてるからってえらそうな口をきくんじゃないよ、あさ子は片膝立ちになって啖呵を切った。若い巡査は眼を剥いて、それから慌ててそっぽを向き、あさ子はまくし立てた。