轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

六時二十分になって、司会者が演壇へあがった。足場が不安定なので、テーブルの前まで、いかにも危なそうなさぐり足で歩いた。

「へっぴり腰だぞ……」と誰かが呼びかけた、「おっかあを……んじゃあるめえし、しっかり腰を伸ばしてええべや」

高くて広い浴場の空間が、ばかげた哄笑でわれ返るような反響を起こした。

その司会者が誰であったか記憶がない、彼は馴れない役目のためにあがってしまい、顔は蒼く、テーブルにつかまってふるえているのが、私のところからもよく認められた。それで聴衆はすっかりうれしくなり、次から次と嘲笑やおひゃらかしの声がかかった。子供たちまでが面白がって、「……ちゃんこよ、そんなにおっかながるなえ」とか、「おっかあはいねえからしんぺえすんな」などと喚きだした。

全聴衆がそんなふうだったわけではない。もちろんこれが町の死活問題に関する大演説大会だということを、しんけんに考えている者も少なくなかったので、制止の声や、司会者を励ます声も聞えだした。すると突然、聴衆の中から一人の若者が出て、すばやく演壇へとびあがった。年は二十六七だったろう、古びた印半纏の下にパンツをはいているだけで、壇上へあがるなり颯と両手を高くあげた。