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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
第二回は浦粕座で、もっと盛大に開催された。聴衆は第一回のときの倍ちかく集まったし、第一回のときよりまじめで、緊張していた。しかし、いよいよ開会が宣せられると、また例の若者が壇上にとびあがった。聴衆は凱旋した英雄を迎えるように、歓声と拍手を送り畳を叩いた。若者は第一回のときと同じく、会社の連中をぶち殺せと叫び、おらが佐倉宗五郎になると叫び、すると臨検の巡査が、――そのときは巡査部長が来ていて、――弁士の中止と、演説会の解散を命じ、若者を連行して去った。
大演説大会は五回まで開催されたが、議題について演説した者は一人もなかった。それは番たび例の若者がとびだして来て、ぶっそうなアジテーションをとばし、そのまま解散になるからであった。私は第二回のあとは聞きにゆかなかった。というのはその台本の筋はほぼ推察できたし、何度やっても結果は同じだと思ったからである。――その若者は巡査に連れ去られるが、次の大会にはまたあらわれた。そうして、第五回の大会のあとで、主催者側は駐在所から非公式に「こういう過激な演説は時節がら好ましくない」という意味の通告を受け、それを機会にその催しをやめることになった。