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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

三

「決して、左様なことは」

「まあ、役僧がどういうか、聞いてみなされ」

何か損でもしたように、僧正どのは、袖を払って、立ってしまった。

三

寄進者の台帳なるものを役僧が引っ張り出して、おざなりに調べてはくれたが、

「べつに、こちらにも、詳しいことは何も書いてない。お山には、度々参籠してござるようじゃ。供の者が、幾歳ぐらいか、そんなことまで分らんよ」

と、膠もない。

それでも武蔵は、

「お手数をかけました」

と礼をのべて外へ出た。そして神楽殿の前へ来て、伊織の姿を探すと、伊織は群衆の後ろにいた。背が低いので、樹の上にのぼり、梢に腰をかけて、神楽を見ているのだった。

彼は、武蔵がその樹の下へ来たことも知らない。全く放心して、神楽殿の舞に見恍れている。

黒い檜の舞台に、五色の帳が垂れていた。棟の四方に、張り繞らしてある注連に、山風がそよとうごいて、庭燎の火の粉がチラチラ燃えつきそうに時折掠める。

「…………」

武蔵もいつか、伊織と共に、舞台へ眼を向けていた。

彼にも、伊織とおなじ日があった。故郷の讃甘神社の夜祭が、此処のような気がしてくる。群衆の人いきれの中には、お通の白い顔があったり、又八が何か喰っていたり、権叔父が歩いていたり――そして自分の帰りの遅いのを案じて、子を探す母の姿が彷徨っていたり――など、その頃の幼い幻影