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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
九
――が、すぐ側の、長岡佐渡や伊織たちのいる床几場のひとかたまりが、自若としているのを見て、強いて平静を装いながら、角兵衛もその周囲も、じっと、動かないことに努めていた。
が――蔽いようもない敗色と、滅失の惨気が、巌流の勝ちを信じていた人々のうえを包んだ。
「……?」
しかもなお、未練や煩悩は、そこまでの現実を見ても、自分らの眼の過りではないか――と疑うように、生つばをのんで、しばしは放心していた。
島の内は、一瞬の次の一瞬も、人なきように、ひそまり切っていた。
無心な松風や草のそよぎが、ただ遽かに、人間の無常観をふくだけだった。
――武蔵は。
一朶の雲を、見ていた。ふと見たのである、われに返って。
今は雲と自身とのけじめを、はっきり意識にもどしていた。遂にもどらなかった者は、敵の巌流佐々木小次郎。
足数にして、十歩ほど先に、その小次郎は俯つ伏せに仆れている。草の中へ、顔を横にふせ、握りしめている長剣の柄には、まだ執着の力が見える。――しかし苦しげな顔では決してない。その顔を見れば、小次郎は自己の力を挙げて、善戦したという満足がわかる。戦に戦いきった者の顔には、すべて、この満足感があらわれているものである。