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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
八
独り泣く病のある少年には、独り泣くたましいの楽しみが同時にあった。泣いて泣いて泣きぬいていると、天地があわれと労り慰めてくれるのである。そして涙が乾きかけてくると、雲の中を出たように心が晴々と冴え返ってくる。
「伊織。伊織ではないか」
「おお、伊織だ」
彼のうしろで突然そういう人声がした。伊織は泣き腫らした眼のまま道を振り向いた。ふたりの人影が夜空に濃く見えた。ひとりは馬の上なので、連れの者よりずっと姿が高く見えた。
八
「――ア。先生」
伊織は馬上の人の足元まで、のめるように駈け転んで行き、そしてもう一度、
「先生っ。先……先生」
あぶみへ、しがみつきながら叫んだのであった。――だがふと、夢ではないかと疑うような眼をして、武蔵の顔を見上げ――また、馬のわきに杖をついて立っている夢想権之助の姿を見まわした。
「どうした?」
と、馬上から見おろしていう武蔵の顔は、月のせいか、いたく窶れて見える。だがその声は、彼がこの日頃、心に渇きぬいていた師のやさしい声に間違いなかった。
「――こんな所を、どうして独りで歩いていたのだい」
それは次にいった権之助のことばである。