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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

露しとど

一

誰が抛ったのか。

裏の方から飛んで来た青い柿の実が一つ、ぐしゃっと、彼の顔に当ったのである。まだ固い青柿だったが、白い肉が砕けて、朱実の顔へもかかった。

もう夕月の藪の中を、小次郎に似た影が、涼しい顔して、町の方へ立ち去った。

露しとど

一

「――先生」

と、伊織は追う。

その伊織の背丈より、秋近い武蔵野の草は高かった。

「はやく来い」

武蔵は、振向いて、草の中を泳いで来る雛鳥の跫音を時々待つ。

「道があるんだけれど、分らなくなっちまう」

「さすがに、十郡にわたるという武蔵野の原は広いな」

「どこまで行くんです」

「どこか、住み心地のよさそうな所まで」

「住むんですか、ここへ」

「いいだろう」

「…………」

伊織は、いいとも、悪いともいわない。野の広さと等しい空を見あげて、

「さあ? どうだか」

「秋になってみろ、これだけの空が澄み、これだけの野に露を持つ。……思うだに気が澄むではないか」

「先生は、やっぱり、町の中はきらいなんだな」

「いや、人中もおもしろいが、あのように、悪口の高札を辻々に立てられては、なんぼ武蔵が厚かましゅうても、町には居づらいではないか」

「……だから、逃げて来たの」