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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

日出づる頃

一

「こまったこと!」

明日を前にして、佐渡は白い眉毛に焦躁をたたえていた。

巌流は、その日。

久しぶりに登城して、藩公から懇篤なことばと、お杯をいただいて、意気揚々、騎馬でやしきへ退がっていた。

城下には、夕刻頃、武蔵について種々な浮説が伝えられていた。

「臆して、逃げたのだろう」

「逃亡したに違いない」

「どう探しても、皆目、姿が見つからないそうだ」

と、いうのである。

日出づる頃

一

逃げたろう? ――

逃げたに相違ない。

ありそうなことだ。

見えぬ武蔵の姿に対して、紛々たる噂のなかに、十三日の夜は明けた。

長岡佐渡は眠らなかった。

よもや? ――とは思うものの、そう思われない人間がよく事の間隙に豹変する。

「――御主君のてまえ」

彼は、切腹すら考えた。

武蔵を推挙した者は自分である。藩の名を以て、試合となった今日、その武蔵が行方を晦ましたなどということがもし起ったら、自決の道を執るしかない。真面目に、切腹を考えながら、佐渡は、きょうも澄みきった朝の晴天を迎えた。

「……自分の不明か」

あきらめに近い呟きをもらしながら、室内の清掃ができる間、伊織をつれて庭を歩いて来た。