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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
五
と、武蔵野の秋も暮れるこの頃を――一先ずすべての迷妄から離れて、ここまで旅立って来たところだった。
だが。
そういう二人の一身上の変化などは、もとより伊織の知るところでもなし、いくら考えても、分ることではなかった。
逃げるにも逃げられないし、涙など見せては、師の恥になると思って彼は、恐ろしい中にも、じっと我慢して、小次郎の面を見つめていた。
小次郎も意識的に、その眼をにらみつけた。だが伊織は眼を反らさないのである。いつか、草庵で独り留守していた折、むささびと睨めくらをしたように、鼻腔でかすかな息をしながら、飽くまで小次郎の面を正視していた。
五
どんな目に遭わされるかと思っているらしい伊織の戦慄は、子ども心の憂いに過ぎなかった。
小次郎には、おばばのように、子どもと対等になる気など毛頭ない、まして今日の彼には地位もできていた。
「ばば殿」
と、ふと呼ぶ。
「おいの。なんじゃ」
「矢立をお持ちか」
「矢立はあるが、墨つぼが乾いておる。なんぞ筆が要用かの」
「武蔵へ、手紙を認めようと思って」
「武蔵へと」
「されば。辻々へ札を立てても、いっかと姿を見せぬし、また、住居もとんと知れぬ武蔵へ――折からこの伊織は、打ってつけな使いではあるまいか。