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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

六

会って意外と欣び合ったほうが興があるから――と申されるのです。……お越しくださいましょうか」

と、いうのである。

武蔵は、頻りと、その分らぬ客に会ってみたくなった。お通ではなかろう。そう思いながら、また、心のすみで、

(お通かも知れないし)

と、思われたりする。

「参ろう」

武蔵は立って、

「伊織。先に寝め」

と、いった。

新蔵は、使いの面目が立ったと欣んで、早速、裏の杉林に繋いでおいた駒を縁先まで曳いて来た。

駒の鞍もあぶみも、秋草の露に、しとどに濡れていた。

六

「どうぞお召しを」

と、北条新蔵は、馬の口輪をつかんで、武蔵へすすめた。

武蔵は、敢て辞退せず、鞍上の人になって、

「伊織、先に寝め、わしの戻りは、明日になるかも知れぬ」

伊織も、外まで出て、

「行っていらっしゃいまし」

と、見送った。

萩、芒の中を、馬上の武蔵と、口輪を持つ新蔵の影とが――やがて、いちめんな露の彼方へ沈んで行った。

伊織は、ぽかんと、独りぼッちになって、竹縁に腰かけていた。この草庵に、独り留守をすることも、珍しくはない。また、法典ヶ原の一ツ家にいた頃のことを思えば、淋しくもない。