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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

三

一歩一歩に夜は白んで来る。

武蔵は、道の草を見ながら踏んだ。自分の踏んで行く先に何者の足痕か、その草露はおびただしく汚れていた。

三

蜿々と、道は山を旋り巡って、やがて、東を望む平地へかかって来た。

とたんに、伊織は、

「あっ、日の出!」

指さして武蔵を振り顧った。

「オオ」

武蔵の顔も、紅に染まった。

見る限りが、雲の海である。坂東の平野も、甲州、上州の山々も雲の怒濤の中にうかぶ蓬莱の島々であった。

「…………」

伊織は、口をむすんで、姿勢を正して凝然と日輪を見ていた。

余りに大きな感動は、少年を唖にさせてしまう。伊織は、何といっていいのか、分らなかった。

自分の体じゅうを旋っている血液と、その太陽の赤いものとが、ひとつみたいな気がして来た。

だから伊織は、

(太陽の子だ)

と、自分を思ったが、それではまだ、彼の感動と、人間精神とが、ぴったりしなかった。

で、彼はなお黙って、恍惚としていたが、突然、大きな声でどなった。

「天照皇大神さまだ!」

振向いて、武蔵へ、

「ね、先生。そうでしょう」

「そうだ」

伊織は、両手を高く翳して、十本の指を透かしてみた。そして、またどなった。