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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

三

しかもそれから十年後の今もまだ、道にさまよっている自分を見ては、

(救い難い愚物)

と、あいそも尽き果ててしまわれたに違いない。

呆然、武蔵は立っていた。寝もやらず、山門のまわりを巡って――

すると、遽に。

この夜半を、寺から立って行く者があった。山門を出て行く時、ふと見ると、又八を連れた愚堂である。

いつになく早い脚で。

何か、本山に急用でも起って京へ急ぐのか。寺の人々の見送りも断って、瀬田の大橋を真っ直に。

武蔵は、もちろん、

「――遅れては」

と、白い月の下の影を追って、果てなく慕って行った。

三

軒並び寝しずまっていた。昼見る大津絵屋も、混雑な旅籠屋も、薬の看板も、戸が閉って、人なき深夜の往来は、ただ月ばかりが恐ろしく白い。

大津の町。

そこも、またたく間に過ぎて。

道は、のぼりになる。三井寺や世喜寺の山には、ひっそり夜霧がかぶっていた。逢う人も稀だ。ほとんどない。

やがて、峠の上へ出た。

「…………」

先の愚堂は立ちどまっている。又八坊に何か話しかけ、月を仰いで一息ついている姿だった。

もう、京は眼の下。振返れば、琵琶の湖もひとめの高さ。けれど、一輪の月以外は、一色である。