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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

二

で――

送らるる武蔵は、語りたい者とは却って語りあう間もなく独り船に移ってしまったのであった。

行き先は、豊前の小倉。

そして彼の使命は、細川家の長岡佐渡の斡旋で、佐々木小次郎と、積年の宿題たる試合の約を、果すにあった。

もちろん、このはなしが、具体的にきまるまでには、藩老長岡佐渡の奔走や文書の交渉がかなりあって、武蔵が、昨秋以来、京の本阿弥光悦の長屋にいるということが分ってからでも、約半年もかかって、ようやく、まとまったことなのであった。

二

巌流佐々木小次郎と、いつかは一度、一期の面接は避け難いであろうとは、武蔵も疾く期していたことだった。

――遂に、その日が来た。

だが。

武蔵は、こんな晴がましい人気を負ってその場へ臨もうなどとは露だにも予期していなかった。

きょうの出立にしても然りである。こういう大仰な見送りなど、心の裡ではもってのほかなと思う。

思いつつ、拒み得ないのは、世間の人々の好意である。

武蔵は恐いのである。理解ある人の好意には、襟を正すが、その衆望が浮薄化して、人気というような波に乗せられることを、恐ろしいと思った。

ふとすれば、自分も凡夫だし、思い上がらないものでもない。