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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

菰の裾からにゅッと出ている二本の足には、土だらけな草鞋が結いつけてあり、壁へ寄せて、この若者の持物らしい旅包みと、笠と、一本の丸杖とが、置いてあった。

「お客かえ、あの若い衆は」

小女に訊くと、

「はい。一眠りしたら、奥の院へ登りに行くだから、眠らせてくれといいなさるで、木枕を貸してあげましただ」

と、いう。

「そうならそうとなぜいわないのさ。うちの人と間違えてしまったじゃないか。一体、うちの人はどこに――」

といいかけると、かたわらの破れ障子の内から、片脚を土間におろして、体は莚床へ横たえていた藤次が、

「べら棒な。ここにいる俺がわからねえのか。――てめえこそ、店を空けて、どこをうろついているのだ」

と、寝起きの悪い声をして、起き上がった。

勿論この男は、かつての祇園藤次。彼も変り果てたものだが、まだ悪縁も切れずに連れ添っているお甲のほうも、さすがに、元の色香はなかった。男のような女になっていた。

藤次が怠け者なので、自然、女がそうならなければ、生活してゆかれないせいでもあろう。和田峠に薬草採りの小屋を懸けて、中山道を往来する旅の者を殺めては、慾を満たしていた頃はまだよかったが――