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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
「……あ。ここは」
又八道心は慄然とした。新しく建った江戸町奉行所の牢獄と役宅である。沢庵はそのどっちか分らないが一つの門の中へはいって行った。
「……?」
また、急にがくがく慄え出して来た脚は、彼のからだすら支えられなくなって、ぺたんとそれへ坐ってしまった。
どこかで、鶉が啼いている。ホロホロと昼の草むらに啼く鶉の声までが、もう冥途の道の辺のもののように聞えた。
「……今のうちに」
と、彼は逃げようかと考えてみた。自分の身体には、縄も手錠もかけてはない。逃げれば逃げられないこともない気がする。
いや、いや、もうだめだ。この原の鶉のように潜んだところで、将軍家の威令で捜されたら隠れる草の根もあるわけはない。それに頭も剃り、法衣も着せられて、この姿ではどうしようもない。
――お老母っ。
彼は、胸のうちで、絶叫した。今さらながら、母の懐中がなつかしい。母の手から離れさえしなかったら、こんな所で、首を刎ねられる落ち目にはならなかったであろうにとひしと思う。
お甲、朱実、お通、誰、誰、誰と彼が青春の相手に、想ったり狎れ遊んだりした女子の数々も、今、死を前にして、思わぬではなかったが、胸のそこから呼んでいる名は、ただひとつだった。