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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

――その笑い顔の前では、逃げることはおろか、起つこともできないと、伊織はあきらめていた。

「小僧」

小次郎は、当りまえな言葉で話しかけた。

「――今、ばば殿が、ああいうたが、その通りか。それに違いないか」

「ううん、ち、ちがう」

「どう違う?」

「おらはただ、馬に乗って、野駆けに来たんだ。――後なんか尾けに来たんじゃないや」

「そうだろう」

と、小次郎は一応、得心して見せたが、

「武蔵も武士の端くれならば、よもそのような卑劣はすまい。……だが、突然わしとばば殿とが、打揃うて、細川家の家士のうちに交じり、旅立つのを知ったとしたら、さだめし、何事かと武蔵も不審を起して……解けぬ疑いから……後を尾けさせてみとうなるのも人情だ。むりはない」

と、独りぎめして、伊織のいいわけなど、耳に入れない。

伊織もまた、そういわれてから初めて、彼やおばばの境遇に、改めて不審を持った。二人の身に、何か最近、変ったことが起ったに違いない。

なぜならば、小次郎の特徴であった髪や服装も、前とは、人違いするほど変っていて、あの前髪も刈り込み、これ見よがしな派手な伊達羽織も、地味な蝙蝠羽織と野袴とに変っているのである。