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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
丑之助は、二度めの刀で、牛の尻を撲りつけた。牛はまた、大きく吼えて、彼女を乗せたまま猛然と駈けだした。
「うぬ」
「餓鬼っ」
二人の牢人は丑之助を追うのに急だった。丑之助は、渓流へ跳び下り、岩から岩へ逃げ移って、
「おらは、悪くねえぞ」
と、いった。
大人の飛躍は、到底、彼の比でなかった。
愚を悟って、
「小僧は後にしろ」
と、二人は急に、お通を乗せて行った牛の後を追い出した。
それと見ると、丑之助はまた、その後からどんどん駈けて、
「逃げるのかっ」
と、二つの背へ、声を投げた。
「何ッ」
口惜しげに、一つの顔が止まって振向いたが、
「小僧は後にしろ」
と、連れがまた、同じ言葉を繰返して、ひたむきに先へ跳んで行く奔牛へ、足幅を跳ばし続けた。
彼女が先に手綱を引かれて来た時の道とちがって、牛は、闇夜を眼をつぶって駈けるように、渓河沿いの道を離れ、低い山の背や尾根をめぐって――笠置街道とよんでいる細道を果てなく駈けて行くのだった。
「――待てっ」
「待てえっ」
彼らは、牛より迅い自信を持っていたが、平常の牛に対する考えは当らなかった。
奔牛は、瞬く間に、柳生ノ庄に近く――いや柳生よりも奈良に近い街道まで、息もつかずに来てしまった。