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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

てまえに対する万一のお気づかいなら無用なご配慮だが」

と、いった。

ことばは尋常に聞えるが、意味は傲慢な放言に等しい。――今、五郎次が濡れ晒布を巻いている槍は、彼が戦場で得意につかう短刀形の菊池槍である。柄の長さ九尺余、手元から先は青貝塗りの磨出し、菖蒲造りの刃先だけでも七、八寸はあろうという業物なのだ。

「――真槍でいい」

それを見ながら、小次郎は、彼の徒労をすでに嘲うかにいったのである。

「無用ですか」

キッと、五郎次が、彼を見ていうと、君侯の忠利も、君側にいる彼の友も、皆、

(ああいうのだ)

(かまわん)

(突き殺してしまえ)

と、いわんばかりに、眼でぎらぎらと、使嗾した。

小次郎は、早くと、促すように、語気をこめて、

「そうだ!」

と、眼をすえた。

「然らば」

巻きかけた濡れ晒布を解きほぐし、五郎次は長槍の中段をつかむと、ずかずかと進んで来て、

「お望みにまかせる。しかし、それがしが真槍を把る以上、貴方も真剣を持っていただきたい」

「いや、これでいい」

「いや、ならぬ」

「いや」

と、小次郎は、彼の呼吸を圧しかぶせて、

「藩外の人間が、いやしくも他家の君前で、真剣を把るなどという無遠慮は、慎まねばなりますまいが」