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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
五
だが山伏は、手に残った杖の半分を、権之助の面部へ向ってすばやく投げつけ、権之助が、顔をふと交わした一瞬、腰の戒刀を抜いて飛燕のように躍りかからんとするかに見えた。
その時、その山伏が、
「あっ」
といったのと、伊織が渓流の瀬で、畜生っとさけんだのと、同時であって、山伏の足は五、六歩ほどそのまま、だだだだと土橋を往来のほうへ踏み退いた。
伊織の投げた石つぶてが、山伏の面部へ、したたかにあたったのである。悪くすれば左の眼であったかもしれない。とにかく山伏としては、思わざる方角から、致命的な傷手をうけたため、しまったと思ったに違いない。崩れた体勢をそのまま一転、足を変えるが早いか、寺の土塀と渓流のながれに沿って下町のほうへ征矢のごとく逃げ去ってしまった。
岸へ跳び上がった伊織は、
「待て」
と、手の中に、まだ石を握っていて、追いかけそうにしたが、権之助に止められて、
「ざま、見ろ」
と、その石を、もう人影のない朧へ向って遠く投げた。
五
杜氏屋敷の藤六の家へもどってから、程なく、二人は寝どこへはいったが、さて二人とも、なかなか眠れない。
ぐわうぐわうと、峰の夜あらしが、屋の棟を繞って、更けるほど耳につくせいばかりでもない。