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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

五

おれ達を怨むなよ」

と口々にいう。

暴れ狂うにちがいない。そこの素縄を持って来い。両手を縛れ、膝を縛れ――などと大仰にさわぎだすと、伊織は、それらの手を振り払って、

「何するんだいッ」

と、いった。

そして地面に坐り直し、

「覚悟してしたことだから逃げないといってるじゃないか。おらはその侍に、湯をかけてやる理があるからかけてやったんだ。その返報に、おらにも煮え湯をかぶせるなら、かぶせてごらん。町人なら謝るだろうが、おらは謝る筋もないぞ。侍の子が、そればかしのことに、泣きなんかするものか」

「いったな!」

佐兵衛は、腕を捲って、大釜の熱湯を柄杓いっぱい汲んで、伊織の頭の上へ徐々に持って来た。

(……むウ!)

と、唇をむすんだまま、伊織は両眼をくわっと開いて、それを待っていた。

――すると、何処かで、

「眼をふさげ。伊織! 眼をふさいでいないと、眼がつぶれる!」

と、注意する者があった。

五

誰か? と声のほうを見る遑もなく伊織は、注意された通り、眼をふさいだ。

そして、頭の上から注ぎかけられる熱湯を待ちながら――その意識も払いのけて――いつしか武蔵の草庵で、ひと夜、武蔵から聞いたはなしの、快川和尚のことをふと思いだしていた。