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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

六

「あっ。おらは、お武家様を知っていら。お武家様は、下総の徳願寺へ、よく馬に騎って、来たことがあるだろ!」

と、縋りつきそうにして叫んだ。

「伊織。覚えていたか」

「アア! ……忘れるもんか。徳願寺で、おらにお菓子を下さった」

「今日は、お前の先生の武蔵とやらはどうしたな。……この頃は、あの先生の側にはいないのか」

問われると、伊織は突然、シュクと鼻をすすって、鼻と拳の間から、ぽろぽろと涙をこぼした。

六

佐渡が、伊織を知っていたのは、巌流にも、意外であった。

けれどその長岡佐渡は、自分が細川家へ仕官する前から、自分の今の位置へ、宮本武蔵を推挙していた者であり、なおその後も、君公とつがえた約を果さねばならぬとかいって――折あるごとに、武蔵の居所を心がけているとも聞いているので、

(何かの時、伊織を通じて武蔵と知ったか、武蔵をさがすために、伊織を知ったか。とにかく、そんな縁故だろう)

と巌流は、察した。

けれど巌流は、

(この少年を、どうしてご存じか?)

とは、強いて訊いてみる気がしなかった。そんな緒口から、佐渡とのあいだに、武蔵の名が話に出ることは、好ましくない。