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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

この円を、乾坤にひろげてみると、そのまま天地。この円を縮めてみると、そこに自己の一点がある。

自己も円、天地も円。ふたつの物ではあり得ない。一つである。

――ばっ!

と、武蔵は、右の手に一刀を払い、円の中に立って凝視した。影法師は、片仮名のオの字のような象に地へ映ったが、天地の円は、厳として、円を崩してはいない。二つの異なった物でないからには、自己の体も同じ理であるが――ただ影法師が違った形として映る。

「影だ――」

武蔵は、そう見た。影は自己の実体でない。

行き詰ったと感じている道業の壁もまた、影であった。行き詰ったと迷う心の影だった。

「えいッ――」

と、空を一颯した。

左手に、短剣を払った影の形は変って見えるが、天地の象はかわらない。二刀も一刀――そして円である。

「ああ……」

眼が開けたようだった。仰ぐと、月がある。大円満の月の輪は、そのまま剣の相とも、世を歩む心の体としても見ることができた。

「オオ! ……。和上っ!」

武蔵はふいに、疾風のように駈け出した。愚堂の後を追いかけて。

だがもう何を、愚堂に求める気もなかった。ただ、一時でも、恨んだ詫びをいいたかったのだ。