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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

そこも通り抜けて、

「ちと、登りになるぞ」

万兵衛は、山の方へ向って、石段を上がり出した。

杉に囲まれた村社の境内ではないか、お通は、寒げに叫ぶ小禽の声に、ふと、何か自分が危険な線を冒している気がして、

「万兵衛さま。道をお間違えなされはしませぬか。この辺りには、家も見当りませぬが」

「いや、お吟様へ告げて来るあいだ、寂しかろうが、御堂の縁で、休んでいて貰いたいのだ」

「呼んで来ると仰っしゃるのは……?」

「いい忘れていたが、お吟様がいうには、訪ねて来る時は、家に都合のわるい客でも来合せているといけないから……ということだった。お住居は、この林を抜けた彼方の畑地。すぐご案内して来るから、しばらく待っているがいい」

もう杉林の中は暗い。

万兵衛の影は、そこを縫って細道を、急ぎ足に行ってしまった。

人を疑うという性情の乏しい彼女は、それでもまだ、万兵衛の挙動について、疑ってみることを知らなかった。

正直に、山神の祠の縁に、腰をかけて、夕空を見まもっていた。

「…………」

空は暮れてゆく。

ふと、身の辺りに、眼を落すと、暗い秋風が繞っていた。御堂の縁を這う落葉が、ふわりと舞って、二つ三つ膝に乗る。