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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
二
「おうーいっ。誰方ぞ来て下されようっ。……誰ぞそこの辺に人はないか。……ううむ、ううむ」
唸きとも喚きともつかない声が――それも雨風の途断れ途断れに聞えて来た。
「おお、ばばさんに違いはない。――ばば様あ、ばば様あ」
彼女も、此方から、風へ向って声を張った。
二
呼ぶ声は、雨風に攫われて、暗い虚空へ、消えて去ったが、彼女の心は、見えぬ闇の人へ、通じて行ったものか、
「おうっ、おうっ。誰ぞそこらにお出でたお人やある。助けてくだされよの。ここじゃあ、ここじゃがのう。――助けて賜もようっ」
ばばの声が、彼女のそれに答えるように、途断れ途断れに何処からか聞えてくる。
元よりそれも、怒濤のような杉林の雨風に掻きみだされ、纒まった言葉には響いて来ないが、ばばが必死の叫びに違いないことは、お通の耳にすぐ知れた。
探り呼ぶ声も嗄れ果てて、
「……何処ですかあ? 何処ですか? ……ばばさんっ、ばば様あ」
お通は、堂を駈け巡った。
そのうちに――
御堂から杉の樹蔭を曲がって二十歩ほど先、奥の院の登り口となる崖道の断削いだ一方に、熊の穴みたいな洞穴が見出された。
「あっ……ここに?」