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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

と、述懐したこともある。

しかし、典膳にとっては、その善鬼があったため、よい鑑にもなり、励みにもなって、遂に、下総の小金ヶ原で、彼と試合して、彼を斬った。そして、一刀斎から、一刀流の印可伝巻を授けられたのであった。

――今。

佐々木小次郎を見て、彼はその善鬼を思いだしたのである。善鬼には、強さはあっても、教養はなかったが、小次郎には、それへ加うるに、当世的な鋭智があり、侍の教養も身についていて、それは彼の剣に、渾然と一つのものになっている。

それを、じっと見て、

(自分の敵するところではない)

と忠明はすぐ潔く心のうちで、思い捨てた。

柳生に対してだって、彼は決して卑下は抱いていない。今でも但馬守宗矩の実力などは、そう高く買っていない彼ではあるが――今日という今日――佐々木小次郎という一介の若者に対して、彼は正直に、

(おれも、そろそろ時代に取り残されて来たかな?)

と、剣の老いを覚えたのである。

誰かのいった言葉に、

先人ヲ追イ越スハ易ク

後人ニ超サレザルハ難シ

と、あるが、その語を、今ほど痛切に覚えたことはない。柳生とならび称されて、一刀流の全盛を見、老来やや人生に安んじているまに、社会の後からはもう、こんな麒麟児が生れつつあったのか――と、大きな驚きをもって、小次郎を見たものであった。