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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

四

こんどは城太郎が意気ごむと、巧みに外して、また逃げるのだった。

賢しくも伊織はそうして、徐々に敵を村のほうへ誘って行こうとするらしいのである。そして遂に、草庵の跡に近い雑木林の中へまで連れこんだ。

西陽はとうに薄れかけていたので、林の中はもうじっとりと夕闇がこめていた。先へ走りこんだ伊織を追って、城太郎はするどい血相をもって追いかけて来たが、彼のすがたが見当らないので、一息つきながら、

「チビめ、どこへ潜ったか」と、見まわしていた。

すると、側の大きな樹のこずえから、樹皮の塵がはらはらとこぼれて、彼の襟くびに触った。

「そこだな」

と、城太郎は、宙を見あげてどなった。こずえの空はこんもりと暗く、白い星が一つ二つ見えるだけだった。

四

梢の上からは何の答えもない。雫が降って来るだけだった。城太郎は思案していたが、伊織が逃げ上がっていることは確かと見極めたらしく、巨きな幹へ抱きついたと思うと、注意ぶかく攀じ登って行った。

果たして、がさっと樹の空で何か動いた。

追い上げられた伊織は梢の頂へ向いて猿みたいに這ったが、もうそれから先は、伝ってゆく枝もなかった。