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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

――這い寄って、

「…………」

その人影は、縁先から、ややしばらくのあいだ、じっと、屋内を窺っている。

月明りを避けて屈んでいるので物音を立てない限り、そこに人間がいるとはちょっと分らないくらいだった。

「…………」

小次郎の鼾声が微かに聞える。――一時、ハタと竭んだ虫の音もふたたび何事もないように、そこらの草の露からすだき始めた。

やがて。

人影は、ぬっくと立った。

そして刀の鞘を払うや否、ぽんと縁先へ跳ね上がって、小次郎の寝すがたへ向い、

「くわッ」

と、歯を喰いしばって、斬りつけたと思うと、小次郎の左の手から、黒い棒が発矢と唸って、その小手を強く打った。

振り下ろした刃は、よほどな勢いであったとみえて、小手を打たれながらも、畳まで斬りさげた。

だが、その下に在った小次郎の姿は、水面を打たれた魚が摺り抜けて悠々と他を泳いでいるように、さっと、壁際へ身をよけて、此方を向いて立っていた。

手には、愛剣の物干竿を、二ツにして持っていた。――つまり左の手には鞘を。右の手にはその抜刀を。

「誰だ」

こういった彼の呼吸でも分ることは、小次郎がこの刺客の襲撃を、疾くから予感していたという点である。