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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

二

二

脱兎のように、一人の井戸掘り人足が逃げ廻って行く。材木の間にかくれ左官小屋の裏へ走り、またそこから飛び出して、土塀足場の丸太へ攀じ付いて、外側へ跳ね飛ぼうとした。

「ふてえ奴」

追い詰めて来た土工のうちの二、三名はすぐ、丸太の上の人間の足をつかまえた。井戸掘り人足男は、手斧屑の中へもんどり打ってころげ落ちた。

「こいつめ」

「胸くそのわるい」

「叩きのめせ」

胸いたを踏みつける。顔を蹴とばす。襟がみをつかんで引き摺り出す。ふくろ叩きなのである。

「…………」

井戸掘りは、痛いとも何ともいわなかった。ただ大地が唯一の頼みのように、地面にへばりついている。蹴転がされても、襟がみをつかまれても、すぐへばりついて必死に地を抱きしめた。

「どうしたのだ」

すぐ頭梁の侍が来た。職方目付も駈けつけて来た。そして、

「しずまれ」

と、押し分けた。

大工のひとりは、昂ぶったことばで、職方目付に訴えた。

「曲尺を踏みつけやがったんです。曲尺はわっしどものたましいだ。お侍の腰の刀と同じでさ。そいつをこの野郎が」

「ま。しずかに申せ」

「これが、静かにできるものか。お武家が刀を土足でふまれたら、何となさいますえ」