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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

伊織は、広い土間と納屋蔵の露地を掃いていた。

「伊お!」

返辞をしないので佐兵衛は帳場から立って来て、欅の角材が、漆で塗ったように黒くなっている店先の框まで出て来て、呶鳴りつけた。

「新参の丁稚っ。呼んでるのになぜ来ないのか」

伊織は、振向いて、

「は。おらか」

「おらという奴があるかっ。わたくしといえ」

「はあ」

「はあじゃない。へいというのだ。腰をひくく」

「へーい」

「おまえ、耳がないのか」

「耳はある」

「なぜ、返辞しない」

「だって、伊お伊おと呼ぶから、自分のことじゃないと思ったんだ。おらは――わたくしは、伊織という名ですから」

「伊織なんて、丁稚の名らしくないから、伊おでいい」

「そうですか」

「こないだも、あれほどわしが禁じておいたのに、また、変な物を持ちだして、腰に差しているな。……その薪ざッぽうのような刀を」

「へい」

「そんな物、差してはいけないぞ。商家の小僧が、刀など差すなんて。――ばかっ」

「…………」

「こっちへ出せ」

「…………」

「何をふくれている」

「これは、お父っさんの遺物だから、離せません」

「こいつめ。よこせというのに」

「わたしは、商人なんかに、成れなくてもいいから」