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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

二

「また、法典ヶ原にいた時のように?」

「いや、こんどは、百姓はせぬ。毎日、坐禅でもするかな。――伊織、おまえは書を読め、そしてみっしり太刀の稽古をつけてやろう」

甲州口の立場、柏木村から野へはいったのである。十二所権現の丘から、十貫坂とよぶ藪坂を下りてからは、ほとんど、歩いても歩いても、同じような野であった。夏草の波のなかに、消え消えになる細い道であった。

行くほどにやがて、笠を伏せたような、松の丘があった。武蔵はそこの地相を見て、

「伊織、ここに住もう」

と、いった。

行く所に天地があり、行く所に生活が始まる。鳥が巣を作るのから較べれば、二人の住む一庵を建てるのは、もっと簡素だった。近くの農家へ行って、伊織は一人の日雇いと、斧、鋸などの道具をやがて借りて来た。

二

草庵とまではゆかない、ただの小屋でもない、妙な家が、とにかく数日の間に、そこに建った。

「神代の家は、こんな物でもあったろうか」

武蔵は、外から、わが家をながめて、独り興に入っている。

木の皮と竹と茅と板とで出来ている。そして柱は附近の丸木である。

その家の中の壁とか、小障子とかに、ほんのわずかばかり使用されている反古紙が、ひどく貴重に見え、また、文化的な光と匂いをたたえ、やはり神代ではあり得ない住居を証拠だてている。