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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

七

「はいこの頃は、明けの卯之刻から辰のあいだに、潮が干きりまして――左様、もうそろそろ潮が上げ始めている頃あいでござりまする」

と、答えた。

武蔵は、うなずいて、

「左様か」

と、つぶやいたきり、また、白い画箋に向って、もくねんとしていた。

太郎左衛門は、そうっと、襖をしめて、元の座敷へ退って行った。――他人事でなく、気にはかかるが、どうしようもなかった。

元の位置に、自分も落ちつくつもりで、しばらく坐ってみたが、時刻が、時刻が、と思うと、坐ってもいられなくなる。

つい立って、浜座敷の縁へなど出てみた。海門の潮は今、奔流のように動いていた。浜座敷の下の干潟へも、見ているうちに、ひたひたと潮は上げて来る。

「お父さま」

「お鶴か。……何をしているのじゃ」

「もうお出ましも間もないかと、武蔵様のお草鞋を、庭口のほうへ廻して参りました」

「まだだよ」

「どうなされましたか」

「まだ、画を描いていらっしゃるのだ。……よいのかなあ、あんなにご悠りしていて」

「でも、お父さまは、お止めしに行ったのじゃないのですか」

「――行ったのだが、あの部屋へ行くと、妙に、止めるのもお悪い気がしてなあ」