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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

おまえは書で読んでいるはずだがな」

「忘れました」

「太平記の中にある、元弘三年と正平七年の両度の合戦――新田義貞、義宗、義興などの一族と、足利尊氏の大軍とが、しのぎを削り合うた小手指ヶ原というのは、この辺りだ」

「あ、小手指ヶ原の合戦のあった所か、そんなら何度も、先生の話を聞いているから知っています」

「では」

と、日頃の伊織の勉学力を試すように、武蔵は、

「その折、宗良親王が。――東の方に久しく侍りて、ひたすら武士の道にたずさわりつつ、征東将軍の宣旨など下されしも、思いのほかなるように覚えて詠み侍りし――と仰せられて、お詠みになった歌、伊織は憶えておるかな」

「います」

伊織はすぐいって、空の碧さに、一羽の鳥影が、漂ってゆくのを仰ぎながら、

「――思いきや、手も触れざりしあずさ弓、起き臥し我が身馴れむものとは」

武蔵は、ニコとして、

「そうだ、では。――同じ頃、武蔵の国に打ち越えて、小手指ヶ原という所に――という詞書の条にある、同じ親王のお歌は?」

「……?」

「忘れたな」

伊織は負けん気に、

「待って、待って」

と、首を振った。

そして思い出すと、こんどはひとり勝手なふしをつけて朗詠した。