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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

そのうちにもう城太郎のすがたは、すぐ眼の前へ来てしまったので、伊織はいかんともする術がなく、栗鼠のようにすばやくどこかへ隠れこんでしまったらしかった。――それを城太郎は知っていたか知らないか分らないが、じろりと、道の両わきに居並ぶ部落の者を眺めながら、ここでは足もゆるやかに、

(手出しをする者があるなら出て来い――)

と、いわんばかりに落着きすまして、悠々と通り抜けて行ったのである。

その間、部落の者は、息もしないで、彼の姿を見送っていた。宝蔵破りの泥棒とどなった声を聞いているので、どんな兇猛な野武士かと思っていたらしいが、案に相違して、まだ十七、八の目鼻だちもよく、凛々しい青年なので、何かのこれは間違いにちがいないと、先にどなった少年の悪戯をむしろ憎んだほどであった。

一方の伊織は、あんなに声をからしても、誰も、泥棒に向おうとする正義の人がいないので、大人の卑劣さに愛想をつかしたが、さりとて、自分の力ではどうにもならないことも知っているので、これは早く中野村の草庵に帰ってあの近所の懇意な人々にも告げ、官へも訴えて、捕まえてやろうと考えた。

で、野火止の部落の裏から、しばらくは畑や道のない草むらを急いだ。