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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

ただ、空地の草ぼこりに、葭簀を立てて、

どんじき

と書いた旗が見える。

屯食――とは遠い時代、握り飯のことを称った名と聞いている。屯食いという意味から生れた言葉であろう。だが、ここの「どんじき」とは一体何か。

葭簀の陰から這ってゆく煙は草にからみついて、いつまでも消えない。近づいてゆくと、煮物のにおいがする。まさか、握り飯を売るわけでもあるまいが、とにかく、喰べ物屋には違いない。

「茶をいっぱいくれい」

日陰へはいると、そこの腰かけに、ひとりは酒の茶碗、ひとりは飯茶碗を持って、がつがつ喰っている二人づれがある。

対いあった腰かけの端へ小次郎は倚った。

「おやじ、何ができるのか」

「めし屋でござります。酒もございまするが」

「どんじき――と看板に書いてあるが、あれは何の意味だな」

「皆さまがお訊きになりますが、てまえにも分らないので」

「おぬしが書いたのではないのか」

「はい、ここでお休みなされた旅の御隠居らしいお人が、書いてやるといって、書いて下さいましたので」

「そういえば、なるほど、達筆だな」

「諸国を、御信心に歩いているお方だそうで、木曾でも、よほど豪家な金持の御主人とみえましてな、平河天神だの、氷川神社、また神田明神などへも、それぞれ莫大な御寄進をして、それが、無二の楽しみだと仰っしゃっている御奇特人でございます