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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

寝る間も油断のならない危険に研がれ、絶え間もなく生命を窺う敵を師として、しかも剣の道は、人をも活かし、世をも治め、自己をも菩提の安きに到って、悠久の生ける悦びを、諸人と共に汲み頒とうという願いにほかならないのである。――その至難の道の途中で、たまたま、つかれ果て、虚無に襲われ、無為に閉じ籠められる時――卒然として、撓めていた敵は、影を顕して来るものとみえた。

矢矧の橋桁に――

武蔵は今、ひたと、身を寄せて屈みこんでいたが、その一瞬に、彼のこの日頃の惰気も迷いも、毛穴からサッと吹き消されていた。

素裸になって、目の前の危険に曝された生命のすずしさである。

「……はて?」

わざと、敵を近よせて、敵の何者であるかを確かめようと思い、息をこらしていると、その影は、期していた武蔵の死骸がそこらに見当らないので、はっと気づいたらしく、彼らもまた、物陰へかくれて、人なき往来と橋の袂を、かえって気味わるく窺い直している様子だった。

その動作に。

武蔵が、はて? ――と感じたわけは、怖ろしく敏捷なのと、黒扮装とはいえ、差刀の鐺や足拵えなど浮浪の徒や、ただの野武士とは、見えなかったからである。