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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁

青空文庫

「もし、又八さんが、お城仕事へ行くなら、わたしはすぐ、逃げちまうからいい」

と、脅すようにいった。

「行くもんか、お前ひとり置いて――」

又八も、そんな仕事はしたくないのである。彼がさがしているのは、体が楽で、もっと、体裁のいい仕事だった。

行水から彼が上がると、次には朱実が、囲いの戸板を殖やして、湯を浴み、ふたりとも浴衣になってから今も、その話が出たが、

「少しぐらい金になるからって、囚人みたいに、体を縛られる働きに出るなど、いやなこった。おれだって、いつまでも西瓜売りじゃいねえつもりだ。なあ朱実、当分貧乏暮しでも、辛抱しようぜ」

冷し豆腐に、青紫蘇のにおう膳をかこみながら、又八がいえば朱実も、

「そうともさ」

と、湯漬を喰べながらいった。

「一生に一遍でもいいから、意気地のあるところを見せてやりなさいよ。――世間の人に」

朱実が、ここへ来てから、長屋では、夫婦者と見ているらしかったが、彼女は、こんな歯がゆい男を、自分の良人に持とうとは思っていない――

彼女の、男を見る眼は、進んでいた。江戸へ来てから――殊に堺町の遊びの世界に身を置いているあいだに――多くの種々な型の男を見ていた。